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図版Ⅹ
干草の山

 〈写真術〉の発見の利点の1つに、それによって画像に多くの微小な細部を導き入れることができるようになるということがある。そうした細部は、表象の真実さと現実性を強めてくれるが、どんな芸術家もそこまでの忠実さで自然を複写しようと骨を折ることはないだろう。
 芸術家は、全体の効果を見て満足するもので、光と影が偶発的に生み出すものすべてを複写するなどといったことは、自らの天稟にふさわしからぬものと見下しているのかもしれないし、また実際そんなことをするのはよほどの時間と労苦を費やさなければ不可能でもある。それはまったく割のあわない仕事で、そんなことなら同じ時間と労苦を他のことに注いだほうがよいだろう。
 しかしながら、これらの微小な細部をなんら労苦を増やすことなく導き入れる手立てが手に入るのは喜ばしいことである。というのも、それらの細部は時に、表象された光景に、予想を超えた豊かな多様性の感覚をもたらすことがあるからである。

図版XI
石版画の複写

 これは、読者諸氏の多くがおそらくよくご存じの、パリのカリカチュアを複写したものである。
 どんな種類の版画も写真という手段で複写することができる。この写真術の利用法はたいへん重要であるのは、単にほぼ本物とそっくりの複写を作ることができるからというだけでなく、それによって思いのままにスケールを変えることができるからである。実物に対して望むがままに、ずっと大きな複写や小さな複写を作ることができるのである。
 パンタグラフやそれに類する装置によって図柄 design のサイズを変更するという古い方法は、のろのろ手間がかかるもので、器具がきちんと作られ、それが非常にいい状態で保たれていなければならなかった。それに対して、写真による複写は、単に〈カメラ〉と実物との距離を短くしたり長くしたりするだけで、拡大されたり、縮小されたりする。
 この図版は、写真術のこの便利な利用法を用いた一例で、サイズを非常に小さくした複写であるが、実物の比率をすべてそのまま保っている。

図版XII
オルレアンの橋

 この図は、オルレアンの街を滔々と流れるロワール川の南岸から撮影したものである。この街には数多くの歴史的出来事の思い出が宿っているが、現在では、その美しい〈大聖堂〉が人々の関心の中心を占める。その〈大聖堂〉の写真(表象)も、今後の分冊のなかでお目にかけたいと思っている。