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これからご覧いただく実例の制作について、一点、少し触れておきたい。図柄に関しては、どの複写もおおよそ同じなのだが、それが呈する色みには若干ばらつきがある。このばらつきは2つの原因が重なって生じたものである。第1に、画像は一枚ずつ別々に太陽の光によって形成されるのだが、わが国の気候では、天気のよい日でさえ、日差しの強さが著しく変化する。雲が出てくると、もちろん画像を刻印するための時間を長くとることになるが、しかしそれは、厳密かつ正確に計算すれば片のつくような単純な問題ではない。
もう一つの原因は、使用する紙の質に、同じ製造業者から仕入れたものでさえばらつきがあるということである――業者自身しか分からない、そしておそらく商売上の秘密である紙の製造方法や「サイジング」に若干違いがあり、この違いが、画像の仕上がりの色調にかなり大きく影響するのである。
こうした色合いは、しかし、もし際だってすぐれた仕上がりを示すものがあるなら、もちろん〔それを基準として〕ばらつきを減らしていくことができる〔均質性に近づけていくことができる〕。しかし、この点について、何人かの鑑識眼をもつ人々にお願いし、どの色合いが全体として好みに合うか尋ねてみたところ、彼らの意見はまったくばらばらな〔全員一致の方向にはまったく近づかない〕ことが分かった。したがって、製法自身の性質のために自発的に色の明暗のばらつきが生じるのであるから、得ることが困難な均質性を目指さないで、生じたものはどれも眼に快いものと認めるのが最も適切であると考えることにした。以上の短文を前置きとして、あとは〈寛大なる読者諸氏〉に存分に画像をお楽しみいただくことを願うばかりである。